糖尿病内科医、大坂先生直伝②肥満解消におすすめの生活習慣

2023年1月16日更新
シリーズ①で肥満について学んだところで、気になる肥満解消のためにはどうすれば良いのか?『食事・運動』についてご紹介致します。『ダイエットはしんどい?』大坂先生はその概念を変えて下さります。まずは意識をすることで体は変わる!実践あるのみですのでぜひご自分の生活と照らし合わせてみてくださいね。

対談者プロフィール

大坂 貴史先生

綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科 部長。

京都府立医科大学 内分泌糖尿病内科 客員講師。

京都府立医科大学 医学部卒業。闘う糖尿病内科医、運動療法の専門家。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Lumedia編集員/法人代表。ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA/居合・弓道・合気道有段者 YouTubeで健康情報紹介しています!健康は~筋肉ぅ!!!

 

牛尾 真智子

薬剤師/メンタルケアカウンセラー

製薬会社2社で乳がん・肺がん・大腸がんなど8つの抗がん剤領域を経験。患者様の人生に携わること・医療業界での知識と経験を生かして、医療と予防医学の懸け橋となる存在になりたいと考えています。

納得感のある、心が軽くなる情報を届けることで、皆様のより良い生活の一助になれるよう邁進致します。

 

肥満解消には食事が要!運動以上に大切な理由とは?

牛尾 肥満について、深く知れたところで、肥満解消におすすめの習慣『食事・運動』について教えて頂けますか。

 

大坂先生 基本的には、まず自分が何を食べてどれだけカロリーを摂取しているかを知ることから始まります。食事を減らさずに痩せることは難しいです。

 

牛尾 ドキ、減らさないといけません、、よね。汗

 

大坂先生 もちろん、絶対じゃないですよ。毎日20キロ30キロ走るなど、ただ普通はないですよね。そうなると、基本的には食事が全てです。そして特殊なことはなくて。カロリーを減らす、ということです。

 

牛尾 なるほどですね、糖質制限についてはどうでしょうか。

 

大坂先生 そこは色々な議論があって、例えば低糖質 vs 低脂質 など。でもね、結論をお話すると糖質を食べていても痩せます。一方で食べなかったら絶対痩せるわけではないんです。

ただし、これはすべての肥満患者さんの一般論であって個別の患者さんでは糖質制限がうまくいく場合もあります。

 

牛尾 個別化、ですか。

 

大坂先生 そうです、糖質制限は比較的理にかなっている部分もあって、例えば食堂にいった場合、ごはんの量は調整しやすいんですよね。半分にしたり無しにしたり。男性はラーメンが鍵になることも多いです。まぁ油も多いので糖質と脂質がカロリーになるのですが。

 

糖質制限は、結構分かりやすく『なにを辞めたら良いか?』がいえるんです。女性の場合はお菓子が消えますよね。これでカロリーは絶対的に減るんです。

 

牛尾 確かに、辞めるものが明確化されるとわかりやすいですね。

 

大坂先生 そうなんです、今の摂取カロリーを知っておくことで漠然と減らすのを防ぐことができるので、糖質制限が取っ付きやすい方にはお勧めですね。

 

ちなみに、中食、ってわかりますか?

 

牛尾 なかしょく、ですか?分からないです。

 

大坂先生 コンビニなどで買ってきて中で食べることを中食といいます。大抵カロリーが記載されているので、自分で把握できる人はぜひチェックする癖をつけてください。それを習慣づけると摂取カロリーを把握でき、減らす量もわかっていきます。

 

牛尾 なるほどですね、実際に減らすときに、何から減らしたら良いのでしょうか。例えばこれだけは食べたい、という人もいるはずで、減らすコツなどはありますか。

 

大坂先生 まず、何のために痩せるか?目的と期間を明確化しましょうか。

短期目標『3カ月後にドレスを着る』ならできることでも、『健康のため、一生の目的』となると長期継続できないと意味がないです。続けられることはなんだろう?と考えるんです。

 

牛尾 なるほど~。継続は力なり、ですね。

 

大坂先生 例えばラーメン好きな人が一生NGなんて辛すぎますよね。

なので『ラーメンを食べるためにはほかの食事をどうすれば良いか?』を考えましょう。

一応、適切なバランスというものはあるのですが、炭水化物・タンパク質・脂質のバランスがベスト!というのは確立していないといわれているんです。

 

牛尾 えー!そうなんですね、バランス表に従わないといけないと思っていました。

 

大坂先生 そうです、だから低糖質が絶対良い、などはわからないんです。

逆に言えば『この食べ物は、絶対太る』というものもなくて、ラーメンを食べたとしても、他で調整できれば良いということになります。

定食が健康に良いとされていますが、それはバランスがそれだけで取れているので他のことはあまり考えなくて良いからなんですよ。

 

牛尾 摂取カロリーを意識するうえで大切なポイントですよね。

 

大坂先生 そうそう、最近はアプリで管理できたりするんですよ。あすけん、などが有名かな。

 

牛尾 どのくらいのカロリーを目標値にすれば良いのでしょうか。

 

大坂先生 25×目標体重(kg)以下の摂取カロリーにしましょう。といわれていますが、現在摂取カロリーと比べて、あまりにかけ離れているとやる気が落ちてしまうので、徐々に減らす、で良いと思います。

摂取カロリーを減らす上でもタンパク質の確保は必須!

牛尾 ダイエットにはタンパク質が大切、という話も聞くのですが如何ですか。

 

大坂先生 大事なポイントですね!例えば10kg減る場合に、筋肉と脂肪それぞれが減ります。

筋肉が落ちると体力も代謝も減るしリバウンドしやすくなってしまいます。

なので、できるだけ筋肉は減らさないようにするのがポイントです。筋肉を絶対減らさないのは無理なので。

 

牛尾 そうなんですね。脂肪だけ落としたいのに。。

 

大坂先生 100kgの人が10kg減るとすると、重みが減りますよね。つまり10kgのダンベルを落とすのと一緒で負荷が減り、おのずと筋肉も落ちてしまうんですよ。

 

牛尾 あー、なるほど、わかりやすいです!

 

大坂先生 そこで大切なのはタンパク質をしっかり摂取するということで筋肉が減るのを抑えられるんです。

目安は「少なくとも摂取カロリーの15%、最大35%を摂ること」を意識してほしいです。

 

牛尾 それは、どんなタンパク質でも良いのでしょうか。お肉、お魚、大豆など。。

 

大坂先生 あー、良い質問ですね!

細かい話をすると、タンパク質を沢山摂ると早死にするとか、糖尿病になりやすくなるというデータも実はあって。。

 

牛尾 えー!そうなんですか、驚きました。

 

大坂先生 ただね、その内訳が大事で、動物性(肉)のタンパク質を摂るのがよくないという話なんです。プロテインはこの中に入っていないのと、魚も肉寄りですが魚の油はよい作用があるので、ここでは議論から外します。

 

総じて、肉だけでタンパク質を摂るのが良くない、ということ。植物性たんぱく質も混ぜて食べましょうね。

 

牛尾 毎日ハンバーガーばかり食べるのはだめということですね。

 

大坂先生 そうそう、あと不足しがちなのは食物繊維ですね。十分な1日の食物繊維は18歳~64歳は男性21 g以上、女性18 g以上、65歳以上は男性20 g以上、女性17 g以上です。

糖質制限の話に戻りますが食物繊維は意外と穀物に多いんですよ。白米は少ないのですが玄米、大麦、ライ麦などが挙げられます。

 

牛尾 あー、なるほど!食物繊維は盲点でした。

 

大坂先生 例えば、レタス1玉は食物繊維7gなんですよね。目標値からすると毎食レタス1玉、、、。笑 難しいですよね。これが大麦なら、ごはん1杯で良い!

 

牛尾 急に現実的になりましたね!笑

 

大坂先生 そうなんですよ、穀類に多い食物繊維を糖質制限してしまうと補うのが難しくて便秘になりやすく、大腸がんに罹患しやすくなってしまいます

 

牛尾 食物繊維はレタス、、のイメージでした。笑 他にお勧めの食材はありますか?

 

大坂先生 ナッツ類も多かったかな。ただキロ単位では食べれないので間食にはお勧めしていますが、主食では穀類で取るのが良いかなと思います。

 

あとね、、、オリーブオイルが体に良いって思っていませんか?

 

牛尾 はい、油は健康のためにオリーブオイル使っています!

 

大坂先生 実は落とし穴があって。オリーブオイルとサラダ油を比較して体に良いというデータはどこにもないんですよ。

なので、トンカツをオリーブオイルで揚げたら体に良くなる!なんていうのは大きな間違いです(キッパリ)

 

牛尾 えー-!ショックです。まさに我が家はオリーブオイルだから安心と思っていました。

 

大坂先生 オリーブオイルが良いと地中海食の研究からいわれていましたが、だからといってサラダ油よいも良いわけではないんです。

日本人がよく使う植物油(サラダ油、ごま油など)の脂肪酸組成は、実はオリーブ油に近いことがわかっています。そして油自体の摂りすぎは、種類問わず良くないことを覚えて頂きたいです。 

 

牛尾 ということは、調理法も考えなくてはですね。

 

大坂先生 そうそう、トンカツではなくてグリルする、などあくまで油は油。健康に良いからじゃんじゃん使って良いわけではないんですよ。

体重を減らす以外に大切な運動の役割

牛尾 食事について、幅広い観点から大変勉強になりました。それでは、運動についても続けてお伺いできますか?

 

大坂先生 肥満治療において、運動は2つの意味合いがあるんです。1つは勿論体重を減らすこと、、と思いがちなのですが実は効果としてはあまり高くないんです。

 

牛尾 え、そうなんですか、痩せるために運動しているんだと思っていました。

 

大坂先生 例えばですが、体重60kgの人が1時間歩くことで消費するカロリーは240キロカロリー、つまりケーキ1個分なんですよ。

 

牛尾 1時間かけて歩いて、摂取するのは一瞬ですね。。笑

 

大坂先生 走るともっとカロリーは消費できますが、運動をメインにカロリーを調整するのは意外と難しいです。あと、運動するには運動できる能力も必要なんですよ。例えば太っていて膝が痛くて1時間散歩できない人もいるんですよね。

 

牛尾 減量のためではないとすると、何のために運動するのでしょうか。

 

大坂先生 改めて運動の目的は2つあります。1つ目は、体重減少に伴う筋肉喪失を防ぐこと。

このサポートの代表例は筋トレです。

 

2つ目は、肥満は病気になりやすい、標準体重の人が体重100kgになったときに、病気になる確率は増えてしまいます。一方で運動をすることは、糖尿病や心筋梗塞など色々な病気になるリスクを下げることができます。

 

つまり、肥満によって生じた健康リスクを打ち消すという目的があるんです。

 

牛尾 その観点は盲点でした。

 

大坂先生 タイムリーな話題では、肥満はコロナの重症化リスクです。運動は逆にコロナの重症化を防ぐことができるといわれています。打ち消す意味合いですよね。

 

痩せていなくても、健康であれば良いよね。まさにメタボリックヘルシーという考え方のもと、運動は健康のために必要です。しかし、見た目にはダイレクトに響かないのにしんどい、という側面があるので、なかなか続かないんですよね。笑

痩せるには運動よりも日常生活動作が倍以上の効果!

牛尾 では、痩せるためにはどういう運動をしたら良いのでしょうか。

 

大坂先生 運動を普段していない人は、日常生活におけるエネルギー消費量は運動の2~3倍以上あるといわれています。そこを生かすことが重要ですね。駅まで歩く、掃除洗濯、階段を上るなど普段の生活の中で体を動かすことに注目して頂きたいです。

 

牛尾 なるほど~、わざわざ運動の時間を取るよりも効果的なんですね。

 

大坂先生 そうなんですよ、気づかないうちに消費カロリーを使っているので効率的ですよ。ちなみに僕は病院ではエレベーターは使わないです!そうしないと時間を捻出できないので。笑

 

牛尾 凄いですね!大坂先生のように生活の中で微調整する能力をつけるということは大事ですね。

 

大坂先生 日常生活動作と絡めて大事なのが、座位時間ですね。座位時間が長いことが不健康と直結しているといわれているんです。

1950年ごろのイギリスの研究で、観光バスの運転手さんと切符を切るお仕事の方で、心筋梗塞や病気のリスクが高いのが、ずっと座っている運転手さんだったんです。ここが発端です。

 

牛尾 えー、面白い研究ですね。現代ではどのように測るのでしょうか?

 

大坂先生 色々な研究がある中で、テレビの視聴時間という物差しがあります。長いと糖尿病や癌にもなりやすく寿命も短いといわれています

 

牛尾 我々パソコン仕事が多いので、、危ないですね。

 

大坂先生 ポイントは、置き換えをすることです。例えばTVを座ってではなく立って、家事しながら見ること。またはブレークスルーも大事で長時間座るよりも、同じ時間座るとしても、まめに立つ習慣をつけることです。

プリンターを遠くに置く、人にものを取ってくるように頼まず自分で取りに行く

僕の事例ではお茶をたくさん飲んでお手洗いに行きたくなるように強制的に仕向けています。笑

 

牛尾 それは有効ですね。集中しているとつい座りっぱなしになってしまうところを、立たざるを得ない状況をつくるということですね!

大坂先生 あとね、外来の時座りっぱなしなので、患者さんを1人1人僕が呼びに行くようにしているんです。

 

牛尾 それは患者さんも嬉しいですね!

 

大坂先生 そうなんですよ、しかも看護師さん方も仕事軽減になって喜んでくれて、僕も健康になるのでみんなハッピーなんですよ。

このような自分の健康のためだけではなくて、プラスαの効果を探すんです。そうしないと行動は変えづらいので、工夫してブレークスルーの時間をつくってみてくださいね。

 

牛尾 大坂先生のアイデアが面白いものばかりで、ぜひ明日から意識して取り組んでいこうと思いました。ありがとうございます!

『食事を制する者はダイエットを制する』

~運動よりも、生活動作を変えるほうが効果的!~

  1. 食事を漠然と減らさずに摂取カロリーを知り減らせるものを決める
  2. 筋肉は減らさないようにタンパク質摂取が鍵
  3. 不足しがちな食物繊維は穀物で補う
  4. オリーブオイルだから安心、は間違い
  5. 運動の目的は筋肉喪失予防と病気のリスク減少日常生活動作を変えることが鍵
  6. 座位時間を減らすために自分以外の人にもメリットがある方法を探す

今回は気になる肥満解消のコツについて教えて頂きました。しんどい運動はしたくない、、そんな方にとっても、今日から始められる生活習慣の見直しや大切な健康への一歩になりますと幸いです。

気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。

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