メンズウェルネス専門医 伊藤先生に聞く!タバコと男性としての健康の関係

2023年1月12日更新
愛煙家にとって生活と切り離すのが難しいとされるタバコについて、実際にお医者さんから見てどうなのか、お勧めの禁煙方法は?など具体的な患者さん・伊藤先生の実体験を交えてお話いただきました。

対談者プロフィール

伊藤 信久先生

グレースメディカルクリニック院長。

鹿児島大学医学部卒業。心臓外科医として大学病院に10年勤務。オペや臨床試験の経験を重ねる。

患者に近い距離での診療を提供するために、グレースメディカルクリニックを開業。男性のQOLの最大化を目指し、栄養療法や予防医療、アンチエイジングなど幅広い治療を提供する。最近はより手軽なオンライン診療にも尽力し、日本全国の悩める方々を診察・治療している。

牛尾 真智子

薬剤師/メンタルケアカウンセラー

製薬会社2社で乳がん・肺がん・大腸がんなど8つの抗がん剤領域を経験。患者様の人生に携わること・医療業界での知識と経験を生かして、医療と予防医学の懸け橋となる存在になりたいと考えています。

納得感のある、心が軽くなる情報を届けることで、皆様のより良い生活の一助になれるよう邁進致します。

 

タバコは男性の機能に影響をあたえるのか

牛尾「まずは、タバコが男性としての健康に悪いと聞きますが本当でしょうか。」

 

伊藤先生「本当です。健康面で言うと【たばこは100害あって、一利なし】です。(キッパリ!)」

 

牛尾「ずばり、言われてしましました、、そんなに悪い習慣なんですか?」

 

伊藤先生「はい。残念ながら、、血管収縮にせよ、呼吸器系にせよ有毒ガスを吸ってるのと同じだと考えられます。」

 

牛尾「有毒ガスと言われると、ドキっとしてしまいますね。」

 

伊藤先生「ただ、実際のところは吸わないといけない人もいるのが事実ですね。欲求がストレスのはけ口になっていることも多いので。やめられないのはそれが原因の方が多く、全てタバコが悪い!というのは難しいと個人的には感じています。ただ、、健康という面から言うと害と言わざるを得ないですね。」

 

牛尾「なるほど、それではタバコは男性の元気に影響するものでしょうか」

 

伊藤先生男性の元気のキーワードは【血流と酸素】です。たばこの煙には三大有害物質であるニコチン、タール、一酸化炭素の他にも70種類以上の発がん性物質が含まれています。

男性の機能に影響を与える物質としては、ニコチンとタールがあり、ニコチンには依存性もあるうえ、血管を収縮させ、血液の流れを悪くしてしまいます。

一酸化炭素は酸素不足を引き起こし、組織に酸素が届かない状態になります。結果として、陰茎海綿体への血流低下や酸素欠乏となり、男性の機能(元気)に影響してしまいます。」

 

牛尾「ということは、ほぼ直結する、、と考えても良いのでしょうか」

 

伊藤先生「はい、タバコは男性機能に直結します。(これまたキッパリ!)」

 

喫煙が男性の機能に直結!では禁煙のメリットとは?

牛尾「実際に禁煙をして男性機能の影響を実感されている患者さんは多いですか?」

 

伊藤先生「禁煙することで、かぁ。悩ましいですね。実際に影響はしているんだけど自覚するまでいくかな、という難しいラインです。」

 

牛尾「なるほど〜。辞めたからすぐに実感できるものではないのですね。」

 

伊藤先生「実は自覚しやすいのは睡眠です。基本的に睡眠障害はタバコが原因ということが良くあります。

禁煙は睡眠の質の向上につながり、自律神経のバランスを整えるだけでなく、テストステロンの低下も防ぎます。結果として、男性機能向上につながります。」

 

牛尾「禁煙をはじめるのはどんなきっかけが多いですか。」

 

伊藤先生「若い方だと、子供が生まれたという方ですね。結婚して奥さんから言われたとか。年配の方はシビアで心筋梗塞や脳梗塞になってしまったという方が多いです。」

 

牛尾「もう、必要に迫られて。という状況ですよね。」

 

伊藤先生「そうなんですよ、だから単純に今後を考えて禁煙しよう、という人もいなくはないけれども、なかなか依存が強いものなので確固たる動機をもっている方が多い印象ですね」

 

牛尾「思った以上に難しいということがよくわかりました。大切な人の身体を守りたいと考えるのですが、禁煙としてのメリットを教えて頂けませんか。」

 

伊藤先生「まず、癌の発生率を抑えることができます。たばこを吸う人(喫煙者)の死亡率は吸わない人(非喫煙者)より高く、国内で喫煙に関連する病気で亡くなった人は年間で12~13万人、世界では年間500万人以上と推定されています。

 

更に、国内の調査では20歳よりも前に喫煙を始めると、男性は8年、女性は10年も短命になることが分かっています。つまり、たばこは健康寿命を短くしてしまいます。

 

でも、35〜40歳で禁煙すれば喫煙前の余命を取り戻すことができるといわれています!更に、50歳で禁煙しても6年、60歳なら3年寿命を延ばすことができると言われていますので、いくつになっても禁煙が遅すぎることはありません。

 

牛尾「禁煙は早い方がよいけれど、いつでも始めることに意義があるんですね。」

 

伊藤先生「そうなんです。一歩踏み出す勇気が必要ですけどね。あとは、QOLに直結する良いこともあります。先ほどもお話した不眠で悩む患者さんは想像以上に多いんです。眠れるようになるというお声は多いです。食欲がでてごはんが美味しくなって、という反応もよく聞きますね。結果太っちゃったり。笑」

 

牛尾「あ~!それは良く聞きますね。ごはんが美味しいと嬉しいですよね。」

 

伊藤先生「裏を返せばタバコが食欲を落としていたんです。今までの患者さんで十数キロ増えたなんて方もいました。幸せなことなんですよね!」

 

眠れない人ほどタバコを吸いたがる?睡眠とタバコの関係

牛尾「なんどもキーワードにでてくる睡眠、ですが不眠で悩むからタバコを辞める、という人はいるのでしょうか」

 

伊藤先生「実は、いざ辞めてみて不眠が改善された!という方が多いんです。眠れない人ほどタバコを吸いたがる傾向があるように思います。吸ったらリラックスして、眠れるんじゃないかという思い込みですね。」

 

牛尾「えっ、リラックスできるから寝たばこされる方もいるんだと思っていました。」

 

伊藤先生「それが、ドーパミンという脳の興奮を促す物質が出てしまうので逆効果なんですよ。覚醒作用があるんです。」

 

牛尾「えー!ご本人が思っていることと逆の反応を身体がしてしまうんですね。」

 

伊藤先生「そうそう、タバコでリラックスしていると思っているのは本人だけで。科学的には実は覚醒してしまっているんです。さきほどの食と合わせて三大欲求が改善するのは生きていくうえで、大変良いことだと思います。

 

睡眠とテストステロンはきっても切れない関係なので、禁煙はその全てに影響を与えるといっても過言ではないです。禁煙することで、睡眠の質が向上し、さらにはテストステロンへも影響する。男性の元気に繋がっていきますね!」

 

ずばりお勧めの禁煙方法とは?

牛尾「三大欲求の全てに関与するなんて。禁煙できるならしたいと考える方も多いと思います。では、お勧めの禁煙方法を教えて頂けませんか。」

 

伊藤先生「色々あるけど、薬を使うのが一番です。現在、保険診療でも禁煙外来はあります。

パッチ剤と内服薬の2種類があります。ただ、個人的には7割くらいの成功率があるといわれる内服がおすすめです。外用は、かぶれも多く少量のニコチンが含まれるため、依存が解消されず禁煙率が低いといわれています。」

 

牛尾「伊藤先生お勧めの、内服薬の具体的な作用機序を教えて頂けませんか。」

 

伊藤先生「内服は2つの作用で有効とされます。

1.タバコを吸ってもニコチンが脳の神経細胞にあるニコチン受容体に結合するのを妨げ、喫煙による満足感を抑制(拮抗作用)。

2.内服薬がニコチン受容体に結合することで少量のドパミンが放出され、タバコを吸ったのと少し近い状態になります。そうすることで禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感が軽減します(作動薬作用)。」

 

牛尾「どのくらいの期間、治療をするものですか。」

 

伊藤先生禁煙外来は8週間です。なので、皮膚が弱い方はパッチ剤だとまけちゃうんですよね。

更に、最初にニコチンが濃いものを入れるので、タバコを吸ったら気持ち悪くなっちゃう、それでパッチ剤は嫌だといわれることもあります。昔の禁酒薬みたいなものですね。

一方、内服薬の初めの1週間は吸いながらで良いよ~なんて徐々に辞めていけるものなので良いです。」

 

牛尾「パッチ剤で気持ち悪くて、潔く辞めよう、とは。。」

 

伊藤先生「ならないんです。依存がベースとしてずっとあるので。イライラしやすくなりついついタバコを吸ってしまう。悪循環に陥りやすいです。」

 

牛尾「OTC(処方箋なしで、薬局で買える薬)はどうでしょうか。」

 

伊藤先生「ニコチンが少量ながら入っているものなので、依存の問題が解消されるか。。難しい場合は、やはり禁煙外来を考えて頂くのが良いと思います。」

 

牛尾「そのほかに禁煙のお勧め方法はありますか。」

 

伊藤先生「最近、禁煙アプリがでてきているんです。保険で適応できるもので、いわゆる生活習慣改善のアプリですね。意識改革から、といったところでしょうか。」

 

牛尾「タバコの辞め方も気になるのですが、ちょっとずつ、と一気にとでどちらが良いとかはありますか。」

 

伊藤先生オセロと一緒でイチかゼロかです!

意味がないというか、結局徐々にしても戻っちゃうんですよね。

アイコスも結局はほぼ発がん性は変わらないのでは、と言われているんです。微粒子になるのでもっと悪くなるというデータもあります。直接的なにおいは少ないのですが、タバコ自体が短く本数が多くなってしまうということもききます。10本が5本になるメリットはあるとは思いますが、個人的にはそれなら辞めたらどうだろうかと思います。」

 

牛尾「困ったら伊藤先生のようなお医者様に相談することが一番ですね。」

 

伊藤先生「そうですね、一人で禁煙はなかなか難易度が高いのではないでしょうか。いつでもお気軽にご相談ください。」 

 

禁煙は男性機能・睡眠・QOL向上など良いことが沢山!

今回は、クリニック院長である伊藤先生にタバコと男性としての健康についてお伺いいたしました。

  1. タバコは男性機能に直結する
  2. 禁煙でテストステロン低下を防ぐ・自律神経が整う・睡眠の質も向上
  3. 禁煙は早い方が良いが、決して遅すぎることはない
  4. 一人では難しいときは禁煙外来がお勧め

睡眠不足や食欲不振、なんとなく調子が出ない。。など悩むことはありませんか。もしかしたらタバコが原因かもしれません。長い将来を考えると、大切な人の命を守るためにも、禁煙に1歩踏み出すことも大切かもしれませんね。本対談が皆様の健康にとって、少しでも参考になりますと幸いです。

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