丸勇史博士が語る、現代の日本人が悩む『脳疲労』の正体とは?
しかし、疲れの原因はいったい何なのか……そしてどうすれば疲労を解消して日々を元気に過ごせるのか、想像したことはありませんか?
今回は画期的な脳疲労回復素材を研究している、京都大学農学博士の丸勇史様に話をお聞きしました。
対談者プロフィール
丸 勇史博士
京都大学 農学部博士
京都大学農学博士。大学各所で非常勤講師を兼任しながら私企業でサプリメントの研究開発に携わり、技術顧問も務める。現在は日本の社会課題といえる『脳疲労』を軽減するための機能性素材を研究している。
佐藤 廉
NR・サプリメントアドバイザー
アルファメイル立ち上げ初期から所属。専門資格の取得で学んだ知識や、数多くの悩みをヒアリング&アドバイスしてきた経験を活かし、男性ヘルスケアの啓蒙や課題解決を行う。
疲労大国のイメージがすっかりと定着したここ日本。睡眠時間を削り、日々疲れと戦いながらお仕事と向き合っている方も多いことでしょう。
しかし、疲れの原因はいったい何なのか……そしてどうすれば疲労を解消して日々を元気に過ごせるのか、想像したことはありませんか?
今回は画期的な脳疲労回復素材を研究している、京都大学農学博士の丸勇史様に話をお聞きしました。
我々が感じている『疲労』にも種類がある
佐藤「本日は忙しい現代人なら誰もが悩む『疲労』についてお話を伺えればと思います。よろしくお願いします。」
丸博士「よろしくお願いします。いきなり質問ですけど、そもそも『疲労』は身体のどこがどう疲れている状態かイメージできますか?」
佐藤「そう言われると、あまり考えたことありませんね…。身体を動かすための筋肉とか、臓器に疲れが蓄積して弱っているのでしょうか?」
丸博士「実は皆さん、普段は意識されないのですが、『疲労』にも種類があるんですよ。佐藤さんがイメージしているのは、筋肉を酷使して肉体が消耗する『筋肉疲労』に近いですね。でも、今の時代はデスクワークで身体を動かさなくても疲れを感じることがあります。」
佐藤「たしかに、身体を動かさなくても長く仕事をしていると、疲れを感じます。」
丸博士「その”感じる”というのがポイントです。実は疲労を”感じている”のはどこかといえば、”脳”なんですよ。だから、身体を酷使していないのに感じる疲労というのは、ほとんどが『脳疲労』と呼ばれるものです。」
佐藤「脳の疲労ですか…。疲れを区別して考えたことはいままでありませんでした。」
丸博士「難しいところもあり、デスクワークでずっと座っていると脳だけではなく身体も固まって疲れると思うのですが、身体が疲れているなと”感じる”ことも、脳疲労に含まれます。明確な定義が難しい部分もありますが、『脳疲労』は肉体的な疲労感と精神的な疲労感、どちらも含む言葉といえるでしょう。」
佐藤「では、私たちが脳で感じる”疲労感”の正体は、ほとんどが脳疲労ってことですね。単純に、筋肉など身体の動かしている部分に疲労がたまっている状態とは違うことが理解できました。」
丸博士「そうなります。ちなみに、学会でも『疲労』と『疲労感』を明確に区別して言わないといけないので、『感』の一文字を間違えると総ツッコミを受けます。区別は重要なんです。」
佐藤「研究者の方は大変そうです……。」
現代人が感じているのは、ほとんどが『脳疲労』である
佐藤「分類はよくわかりましたが、脳疲労は具体的にどんな症状でしょうか?」
丸博士「パソコンやスマホの長時間利用、受験のための勉強、考えごとやなやみごとなど、身体を動かしていないのに疲れを感じるものは大体が『脳疲労』の症状です。身体がだるく感じて、やる気がなくなる感覚ですよね。」
佐藤「そうなると、現代人……特にビジネスマンの疲れは、ほとんどが脳疲労に分類されそうですね。」
丸博士「まさしく、疲労の性質は時代や働き方の変化に伴い変化していると感じます。今はデスクワークの人が多いし、ハラスメントなどでストレスもかかる。あと、誰もが使うスマホでは絶え間なく情報が流れていますね。私には難しいですが、若い人だと動画の速度を2倍速、3倍速と上げるでしょう?あれ、情報も通常の2倍3倍と入ってくるので、脳には相当な負担がかかっているはずですよ。」
佐藤「あ……私もよくやってしまいますが、考えてみれば脳には負担がかかりそうです……。」
丸博士「便利かもしれませんが、脳のことを考えると異常な状態が発生していると思います。それだけ莫大な情報を処理しなきゃいけないですからね……。」
佐藤「なるほど……。たしかに脳疲労の性質は、学生時代に部活で汗を流して疲れた時とは訳が違うと感じます。何とかしたい疲れは、ほとんどが脳疲労ですね。」
『脳疲労』の原因と改善するための取り組みとは?
佐藤「ところで、なぜ脳で疲労が発生するのでしょうか?具体的にどのようなメカニズムで疲労感が生まれているのか、正体をお聞きしたいです。」
丸博士「疲労感……つまり脳疲労は、脳の酷使で発生する活性酸素が引き起こす、脳の炎症が原因だと考えられています。」
佐藤「活性酸素と言えば、身体を酸化させる、増えすぎるとよくない物質ですよね。より詳しくお聞かせいただいても良いですか?」
丸博士「脳が過活動をしてエネルギーを消費していくと、脳内では活性酸素が溜まります。そして活性酸素は脳細胞にダメージを与えるので、増えすぎると炎症が発生するんです。私たちはこの炎症を感じ取り、体感として疲労感が発生すると言われています。」
佐藤「つまり、脳疲労の元凶は活性酸素による炎症ということですね!よく聞く活性酸素がまさか疲労にも関わっていたとは、驚きです。」
丸博士「炎症があるから身体の中で免疫が働いたり、適切な回復を促したりという側面もあるので、実は身体の大切な反応でもあるんです。ただ、現代の生活だと想定よりも炎症が増えすぎてしまうと。そこを充分にケアしてあげることが、毎日を元気に過ごすのに役立ちます。」
佐藤「では、脳疲労を改善するための対策として、どんなことをすれば良いのでしょうか?」
丸博士「基本中の基本ですが、脳疲労の改善には十分な睡眠が重要です。睡眠は脳内に溜まった不要な代謝物や毒素を取り除く役割もあると言われています。脳疲労を感じた時に眠くなるのは、身体が睡眠により脳の不用物を除去しようとしているからといえます。」
佐藤「直感的にも、寝るのが一番だと感じます!そのほかはありませんか?」
丸博士「適度な運動やヨガなど、精神的にリラックスできる行為も脳疲労の改善につながります。これは自律神経が関係していますね。自律神経は身体を活動的にするための『交感神経』と休息させるための『副交感神経』にわかれ、バランスをとっています。そしてリラックスして副交感神経が優位になると、身体のストレス反応が抑制されて、疲労感から回復しやすい状態を作り出してくれるんです。」
佐藤「リラックスすると疲労感が薄れるのは、自律神経のはたらきだったのですね。勉強になります。でも、忙しい人は大切とわかっていても、睡眠や運動、リラックスのための時間をとるのが難しいように感じます。これは欲張りかもしれませんが……もっと手軽に解消できる方法はないでしょうか?」
丸博士「まさに今、研究しているサプリメントの素材が解決してくれるのではないかと考えています。」
佐藤「それは楽しみです!ぜひ詳しく教えてください!」
『脳疲労』の対策に有用なサプリメントはある?
丸博士「本題に行く前に、少し遠回りをさせてもらいます。現在でも疲労回復に良いと言われているサプリメントはいくつかありますが、根本的に『脳疲労』の対策ができるもの……すなわち、脳の活性酸素を直接除去できるものはほとんどないんですよ。」
佐藤「いくつか疲労回復に良いとされるサプリメントは思い付きますが、なぜでしょうか?」
丸博士「脳疲労を回復させるには、2つの条件が必要です。1つは強い抗酸化作用をもち、脳の炎症を抑制してくれること。そしてもう1つが大変で、血液脳関門を通り抜けることです。抗酸化作用のある成分はたくさんありますが、血液脳関門を通り抜ける物質は非常に限られます。」
佐藤「たしかに、脳で作用させるなら血液脳関門の課題がありましたね。詳しくお聞かせいただいても良いですか?」
丸博士「血液脳関門は、脳がもつバリア機能のことですね。人体の中でも脳は最重要器官ですから、必要な物質は優先して取り込み、危険な物質や不要な物質は脳に侵入させない仕組みを備えています。脳に繋がっているすべての血管にこのバリアが存在しているので、血液脳関門を通らない物質はそもそも脳内ではたらくことができないのです。」
佐藤「今考えてみると、巷で言われている疲労回復サプリは脳で作用しないイメージが強いものばかりでした。シトルリンとか、クエン酸とかの一般的な疲労回復成分は、どちらかといえば筋肉や血管に作用する形ですよね?」
丸博士「そうなんです。それでも疲労感は若干緩和されるのかもしれませんが、『脳疲労』の根本的な原因にアプローチができているわけではありません。だからこそ、現在は血液脳関門を通り抜けて抗酸化作用を発揮すると考えられているニンニク由来の成分、『S-アリルシステイン』に注目しています。」
佐藤「ニンニクは古くから健康に役立つ印象ですが、含まれている有効成分の1つですか?」
丸博士「まさに、ニンニクの効果効能を作り出していると言われている成分の1つです。研究により、血液脳関門を通り抜けて脳に作用すると考えてられており、『脳疲労』を軽減する機能が確認されている機能性関与成分として知られています。消費者庁に届出を行う機能性表示食品の成分として、注目が集まっているんですよ。」
佐藤「非常に興味深いです!後ほど、詳しく論文をチェックさせていただきます!」
丸博士「脳疲労に注目していますが、『S-アリルシステイン』は他にも睡眠の質改善やテストステロンの増加、精子機能の正常化など、様々な健康効果が研究で実証されつつある素材です。今後も新たな研究が増えていく可能性は多いにありますので、ぜひ調べてみてください。」
佐藤「本日は貴重なお話、ありがとうございました!疲労は男性のパフォーマンスや日々のコンディションに直結する分野なので、非常に勉強になりました!」